医療ニュース 2024.11.28
下水の新型コロナウイルス調査、予算1・7倍要求で範囲拡大…1週間後の流行を予測
下水に含まれる新型コロナウイルスを調べる事業について、厚生労働省は2025年度、調査地点を拡大する。流行状況の把握の精度を高めるのが狙いだ。欧米では下水の病原体調査が広く普及しており、専門家は「新たな感染症の危機に備え、日本でも調査体制の充実を図るべきだ」と指摘している。
ウイルスは感染者の排せつ物にも含まれる。そこで下水に含まれるウイルスの濃度を分析して、下水処理場のある地域の感染状況との相関関係を把握することを目的に、厚労省が今年度から調査を始めた。現在13都県17か所の下水処理場で実施している。約1週間後の新型コロナの流行状況を予測できることも分かってきたため、調査地点を増やすことにした。他の感染症の調査事業も含めた予算を、今年度の1・4億円から25年度の概算要求では1・7倍となる2・4億円を計上した。今後、下水調査に協力する自治体を募る。
海外では下水調査が広く行われている。米国で少なくとも1500か所、欧州で約30か国1700か所で実施され、対象も新型コロナ以外にインフルエンザなど複数の病原体を調査している。
北島正章・東京大特任教授(下水疫学)によると、全国200か所で調査を行えば、人口の3分の1、約4000万人の範囲をカバーできるとし、「下水から新型コロナ以外の病原体も広く調べられる体制を整えるべきだ」と訴えている。