医療ニュース 2024.10.22

投票所での氏名「読み上げ確認」やめる自治体が増加…有権者のプライバシーに配慮

 選挙の投票所を訪れた有権者の本人確認をする際、係員による氏名の読み上げを取りやめる自治体が増えている。不特定多数の人が集まる場で自身の氏名を明かされることを嫌がる人もいるためで、有権者のプライバシーに配慮する狙いがある。(石井一秋)

 公職選挙法は選挙人名簿に登録されていない者は投票できないと定めており、各自治体の選挙管理委員会は、有権者の入場整理券の氏名や住所を選挙人名簿と照合して、本人かどうか確認する。誤って他の家族の整理券を持参する人もいるため、氏名の読み上げが広く行われてきた。

 しかし、東京都武蔵野市選挙管理委員会は今回の衆院選(27日投開票)から、読み上げを希望しない有権者の氏名は呼ばず、係員が整理券に印字された氏名を指さし、「ご本人様で間違いありませんね」と質問する方式に変更した。整理券に、読み上げを希望しない場合はチェックを入れる欄を設けた。市選管の担当者は「読み上げに不快感を示す有権者がいたことから導入を決めた。読み上げをしなくても、きちんと本人確認はできる」と話す。

 世田谷区選管は2022年の参院選から、心と体の性が一致しない「トランスジェンダー」への配慮から、同様の取り組みをしている。区議から「社会的には別の性別を生き、通名で通していることも多いトランスジェンダーにとって、実名の暴露は生活基盤を失いかねない死活問題」との指摘があったことがきっかけだ。

 今年7月の都知事選の当日投票所では読み上げを希望しない有権者が1465人に上ったという。区選管の担当者は「トランスジェンダーに限らず、氏名を呼ばれて不快に思う人は少なからずいる。誰もが投票しやすい環境を目指したい」と話す。

 このほか、足立区選管と港区選管は、氏名の読み上げを完全にやめ、有権者全員に整理券記載の氏名を指さすなどして本人確認している。

 性的少数者を支援する認定NPO法人「虹色ダイバーシティ」の村木真紀代表は「近所の住民が来る投票所では、名前を読み上げられたくないトランスジェンダーもいる。パーティションで囲ったスペースを設けるなど、人目を気にせず本人確認できるようにしてほしい」と話した。