医療ニュース 2024.10.02

認知症 タイプ別で3番目に多い「レビー小体型」の特徴は?…パーキンソン病と似た症状が出ることも

 認知症といえば「アルツハイマー型」が知られていますが、「レビー小体型」と呼ばれるタイプもあります。幻覚や運動障害などが特徴的な病気です。症状が多岐にわたるため、どの治療を優先するのか、医師と患者の意思の疎通が特に重要になります。(竹井陽平)

 異常なたんぱく質が集まってできた「レビー小体」と呼ばれる物質が大脳の広範囲にたまることで、発症すると考えられています。精神科医の小阪憲司さんがこの病気を発見し、1976年以降に論文で報告しました。

 70~80歳代に多く、女性よりも男性の方がやや多い傾向にあります。長寿医学研究所などが亡くなった人の脳を調べた研究では、レビー小体型は、認知症のタイプ別でアルツハイマー型、血管性に次いで3番目に多いことがわかりました。レビー小体が大脳と脊髄をつなぐ脳幹にたまると、体の硬直や運動障害を招く「パーキンソン病」になることが知られています。

 患者の7~8割にみられるのが存在しない人がはっきり見えるなどの幻覚で、「部屋で知らない子どもが遊んでいる」「亡くなった妻がいる」などと訴えます。

 時間の経過に伴い、認知機能が上下するのも特徴です。朝は家族と普通に会話をしていたのに、夕方になると相手が誰かわからなくなることも起こります。

 歩く速度が遅くなり、つまずきやすくなることもあります。パーキンソン病と同様に、脳からの指令を筋肉に伝える神経伝達物質のドーパミンを作る細胞が減少するためです。転倒による骨折で寝たきりになると、さらに症状が進むので注意が必要です。「パーキンソン症状」と呼ばれています。

 このほかに、寝ている時に大声を上げたり暴れたりする睡眠障害や、気分がひどく落ち込む「抑うつ症状」、自律神経の障害による便秘や尿失禁などもよくみられます。

 症状がみられたら、日本認知症学会や日本老年精神医学会の専門医を参考に医療機関を探し、早期に受診することが大切です。一度たまったレビー小体の除去は困難で根本治療はありません。それぞれの症状に対する治療を行い、生活の質を上げることが大切です。

治療に優先順位

 ある症状の治療が別の症状を悪化させる可能性があります。例えば、神経伝達物質・アセチルコリンが不足して起こる「認知機能障害」や「精神症状」の幻覚を治療しようとアセチルコリンを増やす薬を投与すると、「自律神経障害」の尿失禁や、パーキンソン症状に悪影響を与えます。パーキンソン症状を治療するためにドーパミンを増やすと、精神症状などの悪化を招くことがあります。

 そのため、どの症状を優先的に治療していくのか、主治医は患者のニーズを考える必要があります。

 しかし、近畿大や大阪大などの研究では「患者が治療してほしい症状」と「主治医が考える患者が治療を望む症状」が一致する割合は、50%ほどでした。8割の患者が何を困っているのかを答えられるのに、医師側の思い込みで軽視された場合があると考えられています。近畿大教授(精神神経科)の橋本 まもる さんは「どの症状の治療を優先したいのか、患者自身と家族もきちんと伝えてください」と話しています。