医療ニュース 2024.09.17

高齢ドライバー「第3の選択肢」、サポカー限定免許の申請伸び悩む…新潟県内の取得者は2年で1人

 自動ブレーキ機能などを備えた「サポカー」限定の運転免許制度が高齢ドライバーの事故防止策として導入されてから2年以上が過ぎた。だが、新潟県警によると、県内での取得者は12日現在でわずか1人にとどまる。識者は、サポカーに買い替える経済的負担の大きさや制度の周知不足などが原因だと指摘する。

 安全運転サポート車(サポカー)限定の免許制度は2022年5月に導入され、運転免許の更新か自主返納かで悩む高齢者らの「第3の選択肢」として警察などがPRしてきた。

 限定免許で運転できるのは、アクセルとブレーキを踏み間違えた際の急加速抑制装置や高性能の自動ブレーキ機能などを搭載したサポカーに限られる。

 対象車は警察庁がホームページで公表しており、普通運転免許の取得者も運転できる。だが、限定免許に切り替えた後は、対象車以外を運転すれば違反となる。

 県警運転免許センターによると、全国の限定免許申請者数は20都道府県の計46人(昨年末時点)と伸び悩む。最多は静岡県の12人で、取得者がいない県も目立つ。

 同センターは、「安全運転相談ダイヤル」(#8080)などで自主返納に関する相談を受けた際、サポカーや限定免許についての説明もしてきた。それでも、県内の限定免許取得者は1人しかいない。

 高齢者の運転にかかわる問題に詳しい立正大の所正文教授(産業・組織心理学)は、車の買い替えサイクルが長めの高齢者にとってサポカーの購入は負担が大きいと指摘。「限定免許の普及が進まない最大のネックになっている」との見方を示す。

 所教授は、サポカーの性能がドライバーに浸透していないことや限定免許に切り替えた場合の利点がわかりにくいことも、普及を妨げている要因とみる。

 県警は、限定免許は安全運転への意識向上につながるとして、今後も周知に努めていく方針だ。担当者は「運転に不安を感じる高齢者が事故防止について考え、家族らの安心感にもつながる選択肢になりうる」と強調している。

自主返納数は鈍化

 県警によると、県内で今年発生した交通事故による死者は12日現在で36人に上り、このうち15人は、65歳以上の高齢者が過失割合の大きい「第一当事者」となった事故で亡くなった。

 県警運転免許センターによると、高齢者は加齢に伴って認知、運動機能が低下するため、運転操作を誤った際は、対応が遅れて重大事故につながるケースが多い。

 県内で運転免許を自主返納した65歳以上の高齢者の数は、東京・池袋で高齢ドライバーによる死傷事故が起きた2019年に約1万人を記録した。だが、翌年以降は減少傾向に転じ、23年は約6700人にとどまる。

 自主返納数が鈍化した背景には、地域の足となる公共交通機関の便数が少ないなど、車が生活必需品として手放せない地方特有の事情もあるという。