医療ニュース 2024.08.23

創薬力強化へ新薬の研究開発拠点…海外新興企業を呼び込み、「ドラッグロス」解消図る

 日本の創薬力強化を目指し、厚生労働省は2027年度にも、新薬開発の基礎研究から試験薬の製造、臨床試験までを一体的に実施できる拠点を整備する方針を固めた。創薬を担うスタートアップ(新興企業)を海外から呼び込み、革新的な新薬の開発を活発化させる狙いだ。海外の新薬が日本で使えない「ドラッグロス」の解消にもつなげる。

 政府は7月、医薬品産業を日本の成長を担う基幹産業と位置づけ、創薬力を強化する方針を打ち出した。

 拠点は、その中核的な役割を担うもので、国内に1か所整備し、医療機関が運営する形を想定する。新薬の効果や安全性を確かめるための臨床試験を行う病院のほか、研究施設、試験薬の製造施設を設ける。25年度予算の概算要求に関連経費を盛り込む。

 近年、新薬開発は、米国を中心に新興企業が主に担うようになっている。しかし、こうした企業は日本に支社などを持たないケースが多いため、手厚く支援することで、海外発のシーズ(創薬のタネ)を国内に導入することを目指す。資金力に限界がある新興企業が基礎研究として細胞実験などをしようとしても、自前で施設を用意するのは難しい。拠点には実験室や事務室を設け、間借りして研究できるようにする。

 さらに日本での臨床試験実施を重点支援する。初期段階の臨床試験は、新薬の候補物質を初めて人に投与するため、予期せぬ副作用の発生などに対処できる体制を整える。製造施設では先端技術を使った多様な試験薬の提供を可能にする。

 拠点周辺には、国内外の新興企業を集積させ、製薬会社や大学、資金面で支援するベンチャーキャピタル(起業投資会社)などと連携できるようにする。政府は28年度に、初期段階の臨床試験を10件実施することを目指している。