医療ニュース 2024.06.07

胎児の心臓の異常をAIで検知…先天性の心臓病発見のための支援システム、月内にも実証実験

 先天性の心臓病をいち早く発見するため、AI(人工知能)を使って胎児の心臓の異常を検知する超音波検査の支援システムを、理化学研究所(理研)や国立がん研究センターなどの研究グループが開発した。グループは、システムの精度を確かめる実証実験を、東京都と広島県の7医療機関で月内にも始める見通しで、早期の実用化を目指す。

 赤ちゃんは100人に1人の割合で、先天的に心臓病を抱えて生まれる。成長によって回復する場合もあるが、心不全を起こすような重症の場合は、出産直後に手術ができないと命に関わる。

 このため、胎児期に超音波検査で異常を見つける必要があるが、胎児の心臓は2センチ程度(妊娠中期)と小さく、動きも速いため、正確に診断できる専門医は限られている。出生前に診断できているのは4~5割にとどまっているという報告もある。

 そこで、研究グループは、胎児の正常な心臓の超音波検査画像、約1万2000枚をAIに学習させ、心臓と血管の18か所について、位置や形が正常であるかを検出する技術を開発した。あるべき位置や形でない場合は異常として扱う。最終的には医師が診断する。

 実証実験は、6月から昭和大江東豊洲病院(東京都)など計七つの病院や医院で、妊娠18~36週の妊婦350人を対象に行う。各施設50人ずつ行うことで、医療機関の規模や医師の熟練度により、支援システムの精度や性能に差が出ないかなどを検証する。

 先天性の心臓病には、心臓の壁に穴が開いたり、血管が狭まったりする「ファロー 四徴症しちょうしょう 」や、重要な血管の位置が逆転して血液中の酸素が不足する「大血管転位症」などがある。

 研究を主導する、理研革新知能統合研究センターの小松正明氏(産婦人科医)は「早期発見で助けられる命がある。新しい技術を使った実験結果を反映させることで精度を一層高め、より良い治療につなげていきたい」と話している。