医療ニュース 2024.06.07

iPSから免疫抑える「Tレグ」に近い細胞…京大チーム成功、関節リウマチなど治療期待

 人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から、免疫反応を抑える「制御性T細胞(Tレグ)」に近い細胞を作り出すことに世界で初めて成功したと、京都大などの研究チームが発表した。自己免疫疾患などの治療に生かせる可能性があり、論文が7日、科学誌「セル・ステムセル」に掲載される。

 ウイルスや細菌から体を守る免疫反応は、過剰になると自身の体を攻撃し、関節リウマチなどの自己免疫疾患や、白血病治療の骨髄移植後に起きる合併症などの原因となる。

 こうした過剰な反応にブレーキをかけるのがTレグで、坂口志文・大阪大栄誉教授が詳細を明らかにし、ノーベル賞級の成果と評価されている。患者の体からTレグを取り出して治療に使う研究も進むが、Tレグは培養してもほとんど増えず、数を確保できないことが課題だった。

 京都大iPS細胞研究所の金子新教授らは、人のiPS細胞から免疫細胞を作製。さらに4種類の薬を加えて1~2週間培養し、Tレグの特徴を持つ細胞を作ることに成功した。

 この細胞を免疫細胞と一緒に培養したり、マウスに投与したりする実験を行った結果、過剰な免疫反応を抑える効果が確認された。

 iPS細胞は増殖しやすく、治療に必要な大量のTレグを作り出せる可能性が開けたという。

  三上 統久(のりひさ) ・大阪大特任准教授(免疫学)の話 「今回の成果で、患者自身のTレグだけでなく、健康な他人のTレグを活用する道が示された。コスト削減などが見込める反面、安全性や有効性を慎重に確認していく必要がある」