医療ニュース 2024.06.06

「睡眠科」を診療科名に追加へ、08年以来の見直し…不眠・無呼吸など「国民病」の治療期待

 厚生労働省は、医療機関が掲げることができる診療科名に「睡眠科」を追加する方針を固めた。診療科名を分かりやすく表記することで、患者が医療機関を選択しやすくする。診療科名の見直しは2008年以来となる。日本人は睡眠時間が短く、睡眠障害は現代の「国民病」とも言われる。様々な病気のリスクを高める恐れがあるため、適切な治療につながることが期待される。

 医療機関が看板などで広告できる診療科名は「 標榜ひょうぼう 診療科」と呼ばれ、厚労省が医療法に基づき定めている。「内科」「外科」「小児科」など単独で使えるものが20種類あるほか、「糖尿病内科」「脳神経外科」など組み合わせで認められているものもある。それ以外の診療科も開設できるが、路上や駅での広告や看板などで宣伝ができない。

 追加するには、関連学会の賛同を得た上で、厚労省の医道審議会に意見を聞く必要がある。〈1〉国民の求めの高い診療分野であるか〈2〉診療科名がわかりやすいか――などの条件を満たしていることが前提となる。

 専門医らでつくる日本睡眠学会の調査では、睡眠障害を治療する医療機関(約1200施設)の72%が睡眠科の標榜を希望する。同学会は日本呼吸器学会や日本循環器学会など関連学会から賛同を得られるよう調整を進めており、今夏にも追加を求める要望書を厚労省に提出する予定だ。

 これを受け、厚労省は早急に手続きを進める考えだ。「睡眠科」の単独ではなく、「睡眠内科」「睡眠精神科」など組み合わせで標榜できる方式を想定している。

 現在、患者は症状に応じ、精神科や耳鼻咽喉科、小児科などにかかっているとみられるが、受診先を探しにくいことが課題となっている。日本睡眠学会は「一目で分かる診療科を求めるニーズは高い」と説明する。

 経済協力開発機構(OECD)の調査(21年版)では、日本人の1日あたりの平均睡眠時間は7時間22分で、33か国中で最も短い。厚労省の調査では、睡眠で十分な休養が取れていない人の割合は18年に21・7%に上っている。慢性的な睡眠不足は高血圧や糖尿病、うつ病などのリスクを高める恐れがある。

 こうしたなか、睡眠への関心が高まっている。睡眠の質を高める効果をうたう乳酸菌飲料などが人気となっており、調査会社の富士経済によると、睡眠サポート市場は15年の43億円から22年には640億円に急拡大している。

 ◆ 睡眠障害 =睡眠に何らかの問題がある状態で、心身の健康に影響を与える恐れがある。不眠症や睡眠時無呼吸症候群、過眠症「ナルコレプシー」など約70種類と多岐にわたる。睡眠が不足すると、高血圧や糖尿病、心疾患などのリスクを上昇させる恐れがある。厚労省は睡眠時間の目安として、成人では6時間以上を推奨している。