医療ニュース 2024.05.23

アルツハイマー病の脳内変化、血液検査で推定する手法開発…早期診断に役立つ可能性

 認知症全体の6~7割を占めるとされる「アルツハイマー病」について、症状が出ていない人などの血液を調べることで、脳内でこの病気に特徴的な変化が起きているか高精度で推定する手法を開発したと、東京大などの研究グループが発表した。病気の早期診断に役立つ可能性がある。論文が23日、国際医学誌に掲載された。

 アルツハイマー病は、記憶障害や判断力低下などの症状が表れる10~20年前から、脳内に「アミロイド βベータ (Aβ)」や「タウ」と呼ばれる異常なたんぱく質が徐々に蓄積し、神経細胞が傷つくことで脳が 萎縮いしゅく して起きると考えられている。

 グループは、認知症の症状がない人と、認知症の前段階とされる「軽度認知障害(MCI)」相当の計474人を対象に、血液中に含まれるAβとタウの量を調べて分析することで、脳内でAβの蓄積が起きている「陽性」か、起きていない「陰性」かを推定した。その上で、医療現場で使われている、脳内の蓄積状態を確認できる「アミロイドPET」と呼ばれる画像検査で確かめたところ、血液検査は90%以上の精度で診断できていた。

 昨年12月、認知症の進行を遅らせる効果が認められた「レカネマブ」の投与が始まった。対象は、検査でアルツハイマー病の早期段階と診断された患者に限られるが、アミロイドPET検査ができる施設は少なく、脳脊髄液を採取する検査は体の負担が大きいという課題があった。血液検査は各メーカーが開発を進めており、精度向上が課題となっている。

 研究グループの岩坪威・東京大教授(神経病理学)は「アルツハイマー病治療は早期発見が重要だが、負担の大きい検査を多くの人が受けることは現実的ではない。血液検査は診断効率化に役立つ可能性がある。実用化に備えて診療体制の充実が求められる」と話している。