医療ニュース 2024.05.22
こども家庭庁が「産後ケア」拡充へ…市町村への補助額の上限撤廃、産後うつなど受け入れ支援強化
こども家庭庁は、出産後の女性を心身両面でサポートする「産後ケア」事業の拡充に乗り出す。国から各市区町村への補助額の上限を撤廃し、産後うつなどで支援が必要な母親を受け入れた施設への支援も強化する。今年度中に全ての自治体で事業を実施したい考えで、安心して子育てできる環境づくりを目指す。
産後ケアは、0歳児のいる母親が心身を休められるよう、自治体から委託された助産院や病院が育児を手伝ったり、相談に乗ったりする事業だ。助産師による「居宅訪問型」や、母親が病院などに泊まる「宿泊型」、保健センターへの「通所型」がある。
事業の実施は2021年施行の改正母子保健法で市区町村の努力義務となった。22年度は全国の8割にあたる1462市区町村で実施されたが、利用者は0歳児を持つ母親の10・9%にとどまった。
こども家庭庁は、自治体に事業の実施を促すため、財政支援を手厚くする。
23年度予算の関連事業費は約57億2000万円で、施設運営費の補助は一つの自治体に対して6施設分までしか支給されていなかった。1施設が受け取ることができる補助額は最大で、「宿泊型」が月247万4700円、「居宅訪問型」「通所型」が月169万6000円だった。
24年度は関連事業費を約60億5000万円に増額。6施設分までという上限を撤廃した。1施設が受け取る補助額は、物価高などを反映し、最大で「宿泊型」は月251万9600円、「居宅訪問型」「通所型」は月172万7700円にそれぞれ増えた。
また、特にサポートの必要性が高い母親の利用を増やすため、産後の健診などでうつの傾向があったり、育児への強い不安を抱えていたりする母親を受け入れた施設には、1日あたり7000円加算する。
これらの補助金は国と自治体で半額ずつ負担する。出産後は女性ホルモンの変動で不安定な状態になりやすいとされ、同庁の22年度の調査で、10人に1人の母親に、産後うつの疑いがあった。核家族化などを背景に、親兄弟など身近な人の手を借りにくい人が増えており、政府は産後ケアの普及を進める。
林官房長官は22日午前の記者会見で「子育て家庭の産後の心身の負担軽減を図る観点から、拡充が重要だ。取り組みを通じて全国展開を進めていく」と述べた。