医療ニュース 2024.04.23

新たな感染症対応で感染研と連携、地方衛生研の体制強化へ…「日本版CDC」移行へ環境整備

 政府は新たな感染症に備え、全国の都道府県や政令市などが設置している地方衛生研究所(地衛研)の体制強化に乗り出す。新型コロナウイルスの教訓を踏まえ、感染症対策の拠点である国立感染症研究所(感染研)や医療資材を保有する民間会社などとの連携を深め、検査体制などを整える。

 地衛研は地域における保健衛生行政の科学・技術的な中核機関で、全国85か所に設けられている。感染症発生時に病原体の解析や検査、住民への情報提供などを担う。

 だが、コロナ禍では、PCR検査の依頼などが地衛研に集中し、検査の人員や検体を分析する機材、試薬の不足といった課題が生じた。2020年4月の第1波時は、地衛研などでの検査能力は1日4830件にとどまり、目詰まりが問題となった。新しい病原体を大量に検査する事態を想定していなかったためだ。

 政府は体制見直しが必要と判断し、病原体などを研究する感染研に対し、病原体の検査・研究手法に関する情報を地衛研と密に共有するよう促す。最新の知見を生かし、検査の迅速化や省力化につなげる。地衛研には、変異株の発生情報などを速やかに感染研に提供するよう要請し、情報共有を万全にしたい考えだ。

 資材不足の克服に向けては、感染研が民間会社から試薬や医療機材を確保して地衛研に配布するほか、民間会社に直接、地衛研に提供することも働きかける。全国の地衛研で作る協議会を通じ、感染症発生時に近隣の地衛研同士で試薬を融通し合う仕組みも拡充する。

 地衛研の中には、床の劣化などの老朽化でコロナ関連の資材が搬入できない施設もあった。対策として、24年度予算に計上した関連経費には、国が自治体からの求めに応じて地衛研施設の改修・整備費を補助する費用も盛り込んだ。

 政府は25年4月に、感染研と感染症の治療などにあたる国立国際医療研究センター(NCGM)を統合した専門家組織「国立健康危機管理研究機構」(日本版CDC)を設立する。米国で感染症対策を中心的に担う疾病対策センター(CDC)がモデルで、地衛研との連携も重視している。地衛研の体制強化は、日本版CDCへの移行に向けた環境整備の意味合いもある。