医療ニュース 2024.04.19

感染症対策の政府計画、経済活動とバランス図り「柔軟かつ機動的」に切り替え…コロナ教訓に

 次の感染症危機に備え、政府が改定する「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」の概要が判明した。新型コロナウイルスの教訓をもとに、新たにワクチンや水際対策など7項目を追加した。経済活動とのバランスを図るため、状況の変化に応じ、感染対策を「柔軟かつ機動的」に切り替えることも盛り込んだ。

 同計画は2013年に策定され、抜本的な改定は初めて。政府は来週にも開く有識者会議に改定案を示し、6月中の閣議決定を目指す。

 新たな行動計画では、科学的知見が不十分でも、医療の 逼迫ひっぱく 時には必要な場合、「まん延防止等重点措置」や「緊急事態宣言」など強度の高い措置を講じると明記した。措置は「必要最小限の地域、期間、業態」を対象とし、「国民生活や社会経済活動への影響の軽減を図る」と掲げた。コロナ禍で飲食店の営業時間の短縮など行動制限が長期化し、国民の不満が高まったことを考慮した。

 ワクチンを巡っては、平時から開発・製造に必要な体制や資材を確保し、発生初期には国内で開発や生産を要請するとともに、海外のワクチン確保を進めるとした。コロナ禍でマスクなど必要な物資が不足したことから、国や自治体による備蓄の推進も打ち出した。事業者には生産や輸入促進の要請を行い、医療機関などに十分に行き渡る仕組みを作る。

 感染症の大流行は、1968年の香港風邪や2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)、20年のコロナなど、一定の周期で発生している。政府は実施状況を年度ごとに点検し、今後はおおむね6年ごとに計画を見直す方針だ。

不断の点検と見直し欠かせず

 新型コロナウイルス禍では、政府は感染拡大の防止に軸足を置き、国民の行動や経済活動を長期にわたって制限した。国産ワクチンの開発が諸外国に後れを取ったほか、マスクなど必要な物資も不足し、多くの課題が浮かび上がった。

 行動計画の改定案では、社会経済活動と感染対策の両立を重視し、平時からワクチン開発や物資の備蓄など体制を整えるとした。

 感染症対策の司令塔となる内閣感染症危機管理統括庁の幹部は「また必ずパンデミック(世界的大流行)は来る」と警戒を緩めないよう訴える。行動計画は実行されているかどうか。不十分な点はないか。コロナ禍の教訓を生かすためにも、官民による不断の点検と見直しが欠かせない。(政治部 松本健太朗)