医療ニュース 2024.04.15

24時間使えるAED、学校校門前やコンビニに設置の自治体増…盗難の懸念にはGPSや保険で対応

 救命処置に使われる自動体外式除細動器(AED)が、屋外や24時間営業の店舗に設置されるケースが増えてきた。AEDの多くは屋内に置かれているが、施設の休館日や夜間には持ち出せない。各地の自治体が旗振り役となり、学校の校門前やコンビニエンスストアなどに設置を進め、住民らに活用を呼び掛けている。

 さいたま市は昨秋、市内全58中学校の校門前などにAEDを設置。住民向けに説明書もつけた。昨年12月には、付近の商業施設で倒れた女性の救命処置に使われたこともある。市内の小学校では2011年、駅伝の練習直後に倒れた小学生が亡くなる事故があった。当時、AEDがすぐに使われなかったことを教訓に、市は市民講習会を開くなど活用に積極姿勢だ。市内の区役所でも、屋内に加えて屋外への設置を進める。

 24時間営業の店舗など63か所に置いたのは東京都港区。いつでも使えるAEDが半径300メートル以内にない地域を抽出し、該当エリアの住民の希望を聞き取ってきた。千葉県我孫子市は昨年度、誰でも24時間使える状態で置く場合、購入費などの半額(最大25万円)を補助する制度を導入した。市の担当者は「24時間営業の店舗が近くにない場所もある。少しでも設置しやすくしたい」と話す。

 心停止の状態になると、助かる確率は1分ごとに約10%低下するとされ、AEDの迅速な活用が救命率の向上につながる。規制緩和で一般の人も使えるようになってから今年で20年。公共施設や店舗に設置されたAEDは全国で約67万6000台(22年)に上るとの推計もあるが、埼玉県が県内の状況を調べたところ、23年9月末現在、24時間いつでも使えるのは14%にとどまっていた。

 ただ、屋外設置の場合に懸念されるのが盗難だ。さいたま市ではAEDに全地球測位システム(GPS)機能をつけ、持ち出された場合の追跡を可能にした。24年度中に学校や図書館など約220か所のAEDを屋外に移す計画の東京都江戸川区は一部に盗難保険をかけた。

 活用には、どこに設置しているかを日頃から知らせておくことも必要となる。東京都港区や大田区はホームページなどに「AEDマップ」を載せ、周知を図っている。救命処置などの蘇生科学が専門の石見拓・京都大教授は「近くにいつでも使えるAEDがあれば、自宅で心停止が起きた場合の救命にも役立つ。どこにあるのか、一目でわかる地図と一緒に整備を進めるのが望ましい」と話している。