医療ニュース 2024.04.09

災害時に「スマホ位置情報」を自治体が取得…救助や安否確認の迅速化へ、総務省調整

 総務省は地震や台風などの大規模災害時、被災自治体が安否不明者のスマートフォンの位置情報を取得できるようにする方向で調整に入った。現在、位置情報を取得可能なのは警察などの一部機関に限られており、救助や安否確認の迅速化に向け、今夏までに制度を見直す。

 通信事業者は個人情報を保護する義務を負っているが、国のガイドラインでは、救助が必要な人の「生命または身体に対する重大な危険が切迫している」場合に限り、「警察、海上保安庁、消防、その他これに準ずる機関」から要請があれば、位置情報を提供できると定められている。

 今年1月の能登半島地震では、石川県が作成した安否不明者リストを基に、総務省消防庁がNTTドコモにそれぞれの位置情報の提供を求めた。その結果、68件の位置情報が寄せられ、金沢市内の病院にいることなどが分かり、不明者の絞り込みに役立った。

 位置情報の取得が一部機関に限定されているのは、位置情報のプライバシー性が極めて高く、電気通信事業法が「通信の秘密の保護」を定めているためだ。ただ、通信の秘密も「公共の福祉」の観点から、一定の制約を受けるとされる。

 総務省は国などを経由せず、自治体が安否不明者の位置情報を直接取得できるようになれば、不明者がいる場所を速やかに特定し、より効率的な災害対応を実現できると期待している。

 制度の見直しでは、ガイドラインが規定した「その他これに準ずる機関」について、自治体が災害時に首長をトップとして設置する災害対策本部が該当するとみて、通信事業者への位置情報の提供要請を容認する案が浮上している。

 自治体の危機管理担当部署を「準ずる機関」と解釈したり、ガイドライン自体を見直したりする可能性もある。

 総務省は通信事業者各社と制度設計に関する協議をすでに始めている。スマホが水没などで圏外の場合、過去の位置情報を提供することの是非を含め、早ければ6月頃までに結論を出す方向だ。