医療ニュース 2024.02.19
万博の熱中症リスク、毎日5m四方のエリアごとに危険度表示…仮想空間に再現した会場で予測
2025年大阪・関西万博の熱中症対策として、国土交通省は、気象状況をデジタル空間に再現する新技術「デジタルツイン」を使って、翌日の熱中症の危険度を会場のエリアごとに細かく予測できるシステムを導入する。国内イベントで熱中症リスクを毎日予測する試みは初めて。運営主体の日本国際博覧会協会(万博協会)が、休憩所の設置などの取り組みに生かす考えだ。(科学医療部 松田俊輔)
予測システムは、神戸大や建設コンサルタント会社「東電設計」などでつくる産学連携のチーム「都市丸ごとのシミュレーション技術研究組合」が開発した。
人工島・ 夢洲 (大阪市此花区)に整備される万博会場(約155ヘクタール)の地形やパビリオン、樹木といった3次元データに気温や湿度、風向きなどの気象データを加え、気候変動の研究などに用いられているスーパーコンピューターで翌日の熱中症リスクを算出する。
5メートル四方のマス目ごとに熱中症の危険度を色分けして示すことができる。会期中、予測データを万博協会に提供し、水分補給ができる休憩所の配置や来場者の誘導に役立ててもらう案を検討している。
今年夏に会場予定地で実証実験を行い、パビリオンなどの建設に従事する作業員の熱中症対策に生かせるか検証する計画だ。
環境省と気象庁は21年から、同庁の予測値を基にした「熱中症警戒アラート」を全国で発令しているが、原則、都道府県単位での発表となっている。デジタルツイン技術を使えば会場内の詳細な予測が可能となる。
万博の会期は来年4月13日から10月13日までの184日間で、夏場は厳しい暑さが予想される。アラブ首長国連邦(UAE)で21~22年に開かれたドバイ万博では、真夏の猛暑を避けるために開催期間を半年ずらす措置も取られた。
国交省は今後、万博以外の大型野外イベントでの活用も目指す。チームの大石 哲 ・神戸大教授は「道路1本ごとの熱中症リスクが予測でき、熱中症警戒アラートよりも細かく危険度を示せるのが強み。安心・安全な万博運営に貢献していきたい」と話している。
◆デジタルツイン= 仮想の空間上に現実の環境を「双子(ツイン)」のように再現する先端技術。気象状況の予測研究のほか、都市や人体などを再現し、防災、医療といった幅広い分野での実用化や研究開発も進んでいる。