医療ニュース 2024.01.11

災害関連死防げ、DMATが能登半島の高齢者施設から入所者を搬送…数百人規模で搬送要請

 能登半島地震の被災地で支援にあたる災害派遣医療チーム「DMAT」が、高齢者施設の入所者を石川県内外に搬送する活動を進めている。断水や停電が続く中、安全な場所に移ることで災害関連死を防ぐ狙いがあり、対象者は数百人規模にのぼる見通しだ。

 医師や看護師らで構成するDMATは、能登半島地震の発生直後から、同県庁や同県内の病院などを拠点とし、被災地の医療支援にあたる。病院に入院する患者の搬送が一段落した9日、高齢者施設の搬送を始めた。

 七尾市の特別養護老人ホーム「秀楽苑」では9~10日、併設するグループホームを含む入所者87人全員が、DMATや自衛隊の車両で金沢市や富山県の高齢者施設などに移動した。秀楽苑などは、余震で建物が崩壊する恐れがあったが、認知症や寝たきりの人、酸素吸入が必要な人らがおり、近くの避難所に身を寄せることはできなかったという。

 秀楽苑の宇波秀勝施設長は「停電のため暖房がきく部屋は大広間のみだった。最低限の食事しか提供できず、全員が避難できてほっとしている」と話す。

 今回の活動を指揮する阿南英明・神奈川県理事(藤沢市民病院副院長)によると、10日時点で、高齢者施設から入所者計200~300人の搬送の要請があり、さらに増える見込みだ。搬送者の受け入れ先は、石川県内のほか、富山や愛知など近県の施設を中心に調整している。阿南理事は、「命の危機が迫る高齢者を、他施設にスムーズに受け入れてもらうためには国や各都道府県の協力が欠かせない」と話している。