会員登録者数 55,000人突破!!

記事・コラム 2026.01.13

プロフェッショナルインタビュー

第5回 「みなさんには品格のある医師になってほしいです。」北里大学北里研究所病院 副院長 石井良幸先生

話題沸騰!数々の人気番組に出演している医師たちが語る
「キャリア」「信念」「未来」そのすべてに迫るインタビュー!

どのようにしてスキルを高め、逆境を乗り越えてきたのか?
日常の葛藤、医師としての信条、そして描く未来のビジョンとは――。

【出演番組一部抜粋】
BS朝日「命を救う!スゴ腕ドクター」

今回は【北里大学北里研究所病院 副院長 一般・消化器外科部長】石井 良幸先生のインタビューです!
慶應で外科の礎を築き、がん研究・米国留学を経て北里大学教授へ。
研鑽と挑戦を重ね、臨床・研究・教育で医療の最前線を牽引する外科医の歩みなど、語っていただきました――。

テーマは 第5回「若手医師へのメッセージ」をお話しいただきます。

プロフィール

名前
石井(いしい) 良幸(よしゆき)
病院名
北里大学北里研究所病院
所属
副院長、一般・消化器外科部長、北里大学医学部教授(下部消化管外科学)
資格
  • 日本外科学会外科認定医・専門医・指導医
  • 日本消化器外科学会認定医・専門医・指導医
  • 日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医
  • 日本大腸肛門病学会専門医・指導医
  • 日本内視鏡外科学会技術認定医(消化器・一般外科)
  • 日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医
  • 日本がん治療認定機構がん治療認定医・暫定教育医
  • 難病指定医
  • 身体障害者福祉法指定医
  • 痔核ジオン注使用認定医など
経歴
  • 1966年東京都台東区で生まれる。
  • 1991年慶應義塾大学を卒業後、慶應義塾大学病院で外科研修医となる。
  • 1995年慶應義塾大学医学部外科学教室の助手となる。
  • 1996年国立がん研究センター研究所に出向する。
  • 1998年慶應義塾大学医学部外科学教室の助手となる。
  • 2001年6月から9月まで、米国Cornell大学に留学する。
  • 2003年慶應義塾大学医学部包括先進医療センター助手を経て、2004年に慶應義塾大学医学部外科学教室の助手となる。
  • 2009年慶應義塾大学医学部外科学教室の専任講師に就任する。
  • 2014年北里大学北里研究所病院消化器外科部長に就任する。
  • 2016年北里大学医学部外科学教授に就任する。
  • 2017年慶應義塾大学医学部客員教授に就任する。
  • 2018年北里大学北里研究所病院副院長を兼任する。

第5回 若手医師へのメッセージ

─ 初期研修医への指導で心がけていらっしゃることはどのようなことですか。

今の初期研修医は「将来、どこに入局しようかな」というよりは入局先を大体、決めているという人のほうが多いですね。私としては外科はどのような診療科なのかを分かってもらうことが大事だと思っていますので、「実は外科って、楽しいんだよ。手術も楽しいんだよ」ということを話したりしています。また、外科は生命に直結する分野なので、生命の大切さを伝えることも心がけています。

─ 専攻医への指導に関してはいかがですか。

専攻医にももちろん、外科は生命に関わる診療科であること、生命は大切だということを伝えますが、専攻医は既に外科に入ってきているわけですから、手術についての話をより深くしています。手術は漫然と切っているのではなく、根拠が必要なものなので、エビデンスを知ってほしいです。「こういう手術にはこういうエビデンスがある」ということを知ってもらうだけでなく、私自身がいいと思っている技術を継承したいと考えていますので、より高い専門性を持って教えています。

北里大学北里研究所病院の病棟での写真(右から2人目)

─ 今の若手医師をご覧になっていかがですか。

どの時代でもそうなのでしょうが、今の若手医師にも個人差があります。優秀な人もいれば、外科医に向いていなさそうな人もいますが、それは仕方のないことでしょう。それから、女性医師も増えてきました。女性医師への教育も難しいですね。

─ 座ってできる腹腔鏡下手術は女性に向いているとも聞きますし、カメラの持ち方も女性は丁寧だとも聞いたことがあります。

カメラの持ち方は個人差がありますね(笑)。腹腔鏡下手術も皆が座ってできるわけではありません。術者が座ると、助手が座れなくなる場合もあります。

─ 腹腔鏡下手術は動画でも勉強できるのですよね。

最近の動画の質は良くなりましたが、手術は動画を見るだけではなく、実際に手を動かさないとできるようにはなりません。それから最近はロボット手術が出てきていますが、ロボット手術は座ってできますね。また、腹腔鏡下手術も3Dになって、手術がしやすくなりました。ただ、全ての手術を腹腔鏡でできるかというと、全部はできません。手術適応の判断が難しい患者さんや腹腔鏡では難しい症例はいくらでもあります。そうなってくると、お腹を開ける手術、お腹を開いてできる手技を持っていないと何らかのトラブルになったときに対応できません。腹腔鏡下手術しかできないとそういうトラブルへの対応ができなくなることを危惧しています。

─ どのような人が外科に向いているのですか。

やはり手先が器用な人ですね。手先が不器用で、手術がなかなか進まない人に誰も手術をしてもらいたくありません。ただ、それなりに訓練をすれば、技術はある程度カバーすることができます。そしてエビデンスを理解していることや、解剖学的な根拠を理解し、ロジカルな考え方ができる人が向いています。アバウトな人は手術が雑になってしまいますが、ロジカルな考え方ができる人の手術はシャープですし、「ここは切っていい」「ここは切るとまずい」という判断が的確です。往々にして、手術が進まない先生は切ってはいけないところを切ったりするので、「そこは違うんだけどな」と思ってしまいます。

─ 今は開腹と腹腔鏡の両方を研修するのですか。

今は9割の手術が腹腔鏡で、腹腔鏡でできなければお腹を開きます。ほぼ全ての手術症例をカメラを使った手術である腹腔鏡で始めるような感じです。

─ 腹腔鏡下手術を習いつつ、開腹手術も習うのですか。

そのケースに当たった場合だけですね。例えば乳がんの手術は以前は拡大手術で、リンパ節郭清も大きく切って取っていました。今は乳房温存手術が主流で、傷を小さくする手術をしています。そのため、解剖学的な理解が難しいのですが、それをしなければいけないケースでは理解しておかないといけません。しかし、大きな手術もできないと何かあったときに対応できないので、大きな手術も学んでおくことは大事なことです。

─ 先生の場合は腹腔鏡下手術と開腹手術の割合はどのぐらいですか。

ほぼ腹腔鏡で、腹腔鏡ができない場合にお腹を開きます。お腹を開くかどうかの判断はその場でしますので、メイク・ディシジョンができるということは大事です。自信がない人は手術が進まないにもかかわらず、腹腔鏡で続けようとするのですが、自分の限界を知っておくことも大切ですし、無理だと思ったら躊躇せずにお腹を開いたほうが良いです。手術で優先すべきことは安全性と確実性です。もちろん傷が小さいほうが良いのですが、そこにこだわっているとトラブルになりかねないので、安全性と確実性を向上させるような練習をしてから手術に臨むべきでしょう。

─ 大腸外科の面白さはどういったところにありますか。

消化器外科の手術全般に言えることですが、自分の腕で人を治すことができるということが一番の遣り甲斐です。なおかつ、それで感謝されるということですね。人から感謝される職業はなかなかない中で、直接、自分が腕を振るって、自らの最善のパフォーマンスを出して、患者さんの病気を治せたら最高だなと思います。それから科学の進歩により、デバイスも進化しましたし、ロボットも出てきました。科学技術も進歩していますから、そういったところに携われることも面白さの一つですね。

─ 逆に大腸外科の難しさはどういったところでしょうか。

人の生命を左右するということです。生命に限らず、機能的な面も左右しかねないですし、そこがやはり難しいです。それで良い結果になればいいのですが、悪い結果になることもあるのが外科医として辛いところです。手術をすることで、皆さんに元気になっていただきたいのですが、皆が皆、うまくいくわけではなく、そうでない方もいらっしゃいます。皆さんを良くしたいと思って手術をするのですが、そうならない方がいらっしゃるのは辛いですし、難しいところです。

北里大学北里研究所病院の手術室での外科医師らの写真(右から3人目)

─ これから大腸がんは制圧されるのでしょうか。

最近、大腸がんは減少傾向にあります。早期発見、早期治療と言われていますが、大腸カメラがかなり進歩していることやAIの導入により、診断がより確実になってきました。それに加え、大腸カメラによる治療もかなり進歩していますので、そういった意味では手術に回ってくる症例が少しずつ減っているように思います。検診をきちんと受けて、早期治療を受ければ、大腸がんは怖い病気ではありません。

─ 大腸外科の将来はどうなっていくと予想されますか。

国民医療費は40兆円を超えていますし、医療費を削減しないと財政破綻するという状況ですので、行政は医療費削減のために色々な手を打とうとしています。高額医療費制度の上限額引き上げもその一つです。今回は引き上げが見送られましたが、今後はどうなるかまだ分かりません。それから医療資源の集約化が挙げられます。あちらこちらの病院で手術をされると財政負担が大きくなるので、おそらく手術、その中でも高難度手術に関しては基準を満たした大病院でないとできないという方向になりつつあります。そうすると、小さな病院では急性期医療が行えなくなるというジレンマもありますので、小さな病院はなくなるか、どこかに統合されるかということになり、手術は大きな病院で行うという方針になるのではないでしょうか。

2023年ブラックジャック・セミナー(北里大学北里研究所病院・手術手技講習会)に参加いただいた子供達と
当院外科系医師の集合写真(前列中央)

─ 若手医師にメッセージをお願いします。

将来、開業したいのか、どこかの病院の院長を目指すのか、研究者になるのかといった目標をきちんと作ることがまずは大事です。それから現状に満足せず、向上心を持つことです。常に新しいことを追究していくという向上心を持ってやっていくとモチベーションを維持できます。そして、臨床でも研究でも自分がやってきたことを必ずまとめておくことです。それを論文にしておくことが大事です。私は下の医師にも「自分がやってきたことを振り返ったときに何をしてきたのかが自分で分からなかったらつまらないので、自分が歩んできた道を必ず紙にしておきなさい」と言っています。それ自体が業績ですし、それがキャリアになり、絶対にキャリア・アップに繋がります。最後に「品格のある医師になりなさい」ということです。私は慶應出身なので、福澤諭吉先生を尊敬していますが、福澤先生は品格という言葉を大事にしていた先生でした。品格とは非常に難しい言葉ですが、「品格のある人間」「品格のある医師」になっていただきたいと思います。

2025年病棟納涼会の集合写真(2列目中央)