話題沸騰!数々の人気番組に出演している医師たちが語る
「キャリア」「信念」「未来」そのすべてに迫るインタビュー!
どのようにしてスキルを高め、逆境を乗り越えてきたのか?
日常の葛藤、医師としての信条、そして描く未来のビジョンとは――。

【出演番組一部抜粋】
命を救う!スゴ腕ドクター・Nスタ・プロフェッショナル仕事の流儀・世界一受けたい授業
今回は【東京女子医科大学病院 乳腺外科教授】明石定子先生のインタビューです!
女性医師の外科医の苦労とは。どのようにして大学教授になったのか。
乳腺外科の今後についてなど語っていただきました― ―。
第5回「選択肢の豊富さも若手の先生方に魅力だと思っていただきたい!」をお話しいただきます。
プロフィール

名 前 | 明石(あかし)定子(さだこ) |
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病院名 | 東京女子医科大学病院 |
所 属 | 乳腺外科 |
資 格 |
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経 歴 |
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論 文 |
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主な役職・活動歴 |
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東京女子医科大学乳腺外科 明石定子教授 インタビュー
ー若手医師の外科離れについてはどのように思われますか。
以前はストレート研修でしたし、大学の卒業と同時に憧れだけで何となく外科に入っていた人が多かったのですが、今は初期研修で色々な診療科を一通り回ってから専門科を選ぶ時代になりました。そうすると、きついし、でもお給料は変わらないしということで外科に入ってこなくなったということが外科全体での悩みどころです。
それで、2025年の外科学会では外科に興味を持ってもらおうということで、全国の大学から学生を招待するという企画を行いました。今回は仙台での開催ですので、仙台に行けることを楽しみにしている人もいましたね。その外科学会では若手向けのセッション
を行い、招待された学生は最後に感想文を提出するというノルマがありました。学生にはこういった企画を通して、外科に興味を持ってもらいたいですね。
私は女性外科医会の世話人をしているのですが、その中で女子中高生向けにロボット手術の体験をしてもらう企画
もあります。それは女性外科医会の消化器外科医の世話人の先生が中心で進めておられる企画なのですが、そういった取り組みをしてアピールしているところです。
ー日本乳癌学会に関してはいかがですか。
残念ながら、日本乳癌学会の会員数は減ってきています。会員の年齢層の中で最も多いのが50代から60代ですし、若手医師の新入会者が少なくなっています。しかし、日本での乳がんの患者さんは非常に増えています
ので、乳腺外科医を育てていくことは学会の重要な課題です。私自身も色々な方々に育てていただいたという感謝の思いがありますので、それを若い世代にも繋げていきたいです。
ー医師の中での女性医師の割合は増えましたよね。
私立大学の中には女子の合格者を3割ぐらいに抑えようとして問題になった大学もありましたが、そういう問題が取り払われましたので、半分ぐらいが女子学生になっている大学も増えてきました。乳腺外科に限って言いますと、若手医師の4分の3ぐらいが女性
になってきて、逆に女性のほうが多いという状況です。
ー若手の指導に関して、心がけていることはどのようなことですか。
今は昔みたいに「見て覚えろ」という時代ではないですし、できるところはなるべくやらせようと思っています。基本的にはなるべく教えるという方針ですね。今、当院の乳腺外科の専攻医は多いのですが、患者さんの数も増加
し、ここ10年、20年で2倍、3倍にもなってきています。患者さんの数が増えてきているのに、乳腺外科を目指そうとする医師数は横ばいで、減ってもいないけれども増えてもいません。患者さんの増加に対して、医師の増加が追いついていないので、病診連携やタスクシフトといったところが立ち行かなくなる
のが問題です。
ーがんの中で、乳がんが非常に多いですよね。
そうです。女性がかかるがんの中で乳がんがナンバーワン
になりました。第1回でもお話ししましたが、私が外科医になったときは乳腺外科は消化器外科のほんの片隅にあった診療科でした。でも今や患者さんの数で見ると、とても多い科になりました。逆に患者さんの数が増えたことで、製薬会社の立場からするとマーケットが大きいというのがあるので、新しいお薬が次々に開発されています。そのため、乳腺外科は非常に面白く、エキサイティングな分野
とも言えますね。
そして、乳がんは基本的には治る確率がとても高い
がんなので、多くの患者さんを治せるという実感を持ちやすいし、仕事をしていて楽しく、遣り甲斐を感じることのできる分野です。患者さんがなかなか治らないのであれば、医師としても辛さがありますが、ほとんどの患者さんが治って、元気になっていかれますので、それが遣り甲斐に繋がります。残念ながら再発したとしても、新しいお薬も色々とありますので、そこから治療をすることができます。その面白さもある分野だと思います。
ー乳腺外科の難しさはどのようなところにありますか。
診療の難しさというよりも、とにかく患者さんの数が多いので、スタッフを確保し、いかにうまく外来を回すか
ということが今は切実です(笑)。

ー乳腺外科の今後の展望をお聞かせください。
残念ながら、乳がんの患者さんはこれからも増え続けるという予想があります。2040年の予測でも女性がかかるがんのナンバーワンは乳がん
なんです。そのため、私はまだまだ頑張らないといけないと思っています。治療法としては基本的にはQOLを維持できる治療
がこれからますます増えていくので、患者さんの負担は軽くなっていくでしょう。あとは医療費の問題ですよね。
ー高額療養費制度はどうなるのでしょうか。
これは個々の医師が考える問題ではなく、国全体として考える問題です。乳腺領域のみならず、医療費をどこにっていくのか
を考えてもらわないといけないなと思っています。何でもかんでも、医療費があるから使えばいいというものではないでしょう。
ーどうして、乳がんが増えていくのでしょうか。
高齢出産や未産の場合、乳がんのリスクが出てきます。現在、日本人の平均初産年齢が30歳を超えてきています。これはかつてより10歳ぐらい上がっているわけです。若く産めば産むほど、実は乳がんのリスクは少ない
というデータがありますので、現在の状況だとやはり乳がんの患者さんは増えていくでしょう。
それから栄養の問題もあります。動物性脂肪を多く摂るような食事ですとか、今は全体的に栄養を十分に摂れていることも乳がんのリスク要因です。
それから閉経の年齢が遅くなってきており、生理の回数が以前よりも多くなっていることや閉経後の肥満も乳がんのリスクとなっています。残念ながら乳がんが減ることはないのですが、乳がんになったとしてもきちんと治せばいいのだと考えています。
ーそれでは若手の先生方にメッセージをお願いします。
乳腺外科はニーズが高く、非常に遣り甲斐のある分野です。乳腺外科の魅力は診断から治療、緩和医療まで、トータルで診療できる
ことにあります。それゆえに、どのような場所で働くのかという選択肢も幅広く存在します。
例えば、大規模な急性期病院で手術を中心にして働くだけでなく、検診業務を中心にして働くこともできますし、最近では乳腺専門のクリニックを開業する方もいらっしゃいます。
このような選択肢の豊富さも若手の先生方に魅力だと思っていただきたいですね。乳腺外科の患者さんには若い方が多くて、お子さんがまだ小さいお母さんや社会の中で活躍している女性も大勢いらっしゃいます。幸い治る患者さんが多いので、それが遣り甲斐を感じられる
ところですし、手術の跡も形として見えるところですから、綺麗に治せば患者さんもとても喜んでくださいます。是非、乳腺外科を目指していただきたいと思います。