話題沸騰!数々の人気番組に出演している医師たちが語る
「キャリア」「信念」「未来」そのすべてに迫るインタビュー!
どのようにしてスキルを高め、逆境を乗り越えてきたのか?
日常の葛藤、医師としての信条、そして描く未来のビジョンとは――。

【出演番組一部抜粋】
NHKプロフェッショナル仕事の流儀・情熱大陸
今回は【シロアムの園代表 小児科医】公文和子先生のインタビューです!
女性医師・小児科医として歩み続けた原点と海外への挑戦。
どんな経緯で海外に行ったのか。何を学び、何を得たのか!
シロアムの園の今後の展望など語っていただきました― ―。
第4回「思いから始まるが、思いだけではどうにもならない」をお話しいただきます。
プロフィール

名 前 | 公文(くもん)和子(かずこ) |
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事業名 | シロアムの園 代表 |
所 属 | 小児科 |
経 歴 |
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シロアムの園 代表 公文和子先生 インタビュー
ーシロアムの園を始めるにあたって、どのようなことから始められたのでしょうか。
これを始めようと思ったときにはお金もなく、人もいなければ、場所もなかったんです。そこで、まずはお金集めから始めました。色々な方にお願いして、寄付をいただき、最初は小さな借家で始めたんです。
最初のスタッフはソーシャルワーカー兼事務、作業療法士、管理人、ガードマン、私の5人でした。
この地域は治安がとても悪いので、ガードマンが必要なんです。医療サービスを提供していたのは私と作業療法士とソーシャルワーカーです。子どもたちへの教育もしていくつもりでしたので、もちろん保育士、特別支援教員もリクルートしましたし、理学療法士にもアプローチしたのですが、全く該当せず、作業療法士1人で始めることになりました。
作業療法士や理学療法士のような職種を育てる学校のレベルも低いですし、教えていることも間違っていたりするんですね。特別支援教員にしても、教育制度自体が駄目なので、該当する人がなかなかいなかったことが一番大変でした。基本的には一から育てていくような感じでしたね。
教育面に関しては身体が覚えているということが大きかったです。私は小さい頃からピアノを弾いていましたし、教会などでは音楽に触れる機会も多く、教会学校の先生をする機会もあったりなど、色々な社会がぎゅっと詰まったようなところで生活していたので、そういう経験はとても活かされています。
そして、これを始めるにあたっては色々なところで学ばせていただきました。特に日本の教育事業や入所施設、リハビリなどの施設に行って、「見せてください」とお願いして勉強させていただいたんです。
1週間単位でしたが、多職種での仕事の仕方は本当に勉強になりました。また、当時の日本大使の奥様が日本の言語聴覚士で、小児への経験が何十年とある方だったので、そこでも多くの情報をみっちり教えていただきました。
ー先生の気持ちをそこまで動かす原動力とはどういったものなのでしょうか。
思いから始まったものではありますが、思いだけではどうにもならないので、やはりプロであるべきだと考えています。何を選ぶにあたっても、そういう気持ちや愛といったものから始まって、そこにどういう責任が入ってくるかですよね。思いだけでは駄目ですが、必ず思いから始まるものです。原点にはそれがないと進めません。
そして始まってから「この子がこうなるためにはどうしたらいいんだろう」と考えると、学ばないといけないですし、プロでないといけません。だから、うちのスタッフには「とにかくプロであれ」ということを徹底して話しています。

ー差別がとても強い地域ということですが、文化的背景もある中でその思考を変えていくことは難しいように感じます。
文化には変えられないところと変えられるところがあります。
変えないほうがいいことも多くあります。もちろん差別や偏見という文化はいいものではありませんが、日本の人たちに差別や偏見がないかというと、より悪い方法で差別をしている人もいます。そういう意味ではこちらの人たちのほうがストレートで分かりやすいところがあります。
ただ、そのような差別や偏見を文化として捉えていいのかという問題はあります。それは知識なのかもしれないし、生き方の問題なのかもしれないし、個人の問題なのかもしれません。
とても昔のことですが、私が海外に出るときにある先生から「日本にはないが、多くの国では女性器切除(FGM)という文化がある」
と聞きました。ユダヤ教の信者やアフリカの人たちは皆、それをしています。そうやって、女の子たちが大きな問題を抱えているということを聞き、「そのようなカルチャー的な問題は難しいですね」と言うと、その先生から「それをカルチャーというのは間違っています。それはもう人権侵害ですから」と言われました。だから差別や偏見にももちろん文化として尊重やリスペクトをしないといけない部分もありますが、要は人権なんです。
人権となると、これはこういう文化だからと言ってはいけない部分があります。アフリカでは人との繋がりの濃さは文化であり、とても良いことですが、その中で皆が分かりあっていけば差別や偏見もなくなっていくでしょう。
コンセプト的に「カルチャー」と置くのはどこまで許されるのかというところが難しいですし、尊重すべき良いカルチャーもありますが、人権だから譲ってはいけない、変えていかないといけない部分もあると思っています。
ーシロアムの園を運営するにあたっての難しさはどのようなところにありますか。
一番の課題はもちろん経済面です。そういう制度が整っていない国で事業をしようと思うと、ドネーション(寄付)に頼らないといけない部分があります。そういう経済面に加え、技術的な課題もあります。とにかく色々な方々に支えられているからこそ、この事業ができているという実感があります。
私も一人の人間なので限界があるのですが、そうした限界の中でこの事業に関わってくださっている方を一人一人大切にしていくことが経営にあたっては重要なことですね。
それから人育てに関しても課題があります。5人から10人ぐらいの小さな団体として始めたときは阿吽の呼吸で何となく伝わっていたことが20人になったら伝わらなくなってきたということがありました。きちんとした伝え方をしないといけない、組織として、きちんとしたことをしていかないといけないと痛感しますね。少人数のときはルールが不要であっても、20人を超えたらルールが必要ですし、そういうことを一つ一つ丁寧に進めていくことで、スタッフが「子どもたちと出会えて良かったな」「仕事をして良かったな」と思えるようになりますので、職場の環境は大事だと考えています。
もちろん給料も重要ですが、そこは寄付で賄っていますので、すごく安月給で働いてもらっています。そういう中で何がモチベーションになるのかというところは考えますし、注意しています。
ーシロアムの園での活動で遣り甲斐を感じられるのはどのようなときですか。
毎日の全てに遣り甲斐を感じますし、楽しいです。子どもたち一人一人の笑顔がとても嬉しいです。もちろん改善ということを目指せない子どもも多くいますし、歩けない子どもが歩けるようになることも多くはありませんが、何よりもそういうところから私たち自身が喜びをいただけるのは大きいです。
ただ、私も歳を取ってきて、業務がきつくなっているところはあります。記憶力や体力が落ちましたね。これまでしてきた業務が全部できるわけではなく、同じペースで走り回るわけでもないので、だからこそ仲間の大切さを感じます。自分が全てをキープするのではなく、仲間と一緒にやっていくということを確認するようにしています。
